論文紹介
【肺がん】
論文タイトル:
Rates of Systemic Treatment for Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer Among Older Adults
進行非小細胞肺癌を患う高齢者にどの程度、全身治療が行われているのかを検討した研究です。
近年、進行非小細胞肺癌では免疫療法や分子標的治療の進歩により、治療選択肢が大きく広がってきた。一方で、こうした治療の進歩が、高齢患者全体にどこまで行き渡っているのかは十分に明らかでなかった。このため本研究では、米国の進行非小細胞肺癌を患う高齢者を対象に、全身治療の実施割合、その経時的推移、さらに治療導入に関連する因子を検討した。
対象は、2006~2021年に進行非小細胞肺癌と診断された65歳以上の患者、25万4611例である。米国のSEER-Medicare連結データを用いた集団ベース研究で、主要評価項目は全身治療の実施割合とした。解析には、全身治療導入に関連する因子を検討するため、競合リスク比例ハザードモデルを用いた。結果、全身治療を受けた患者は全体の46.8%にとどまった。2006年から2021年にかけて治療実施割合はわずかに上昇したものの、その改善は限定的であった。診断後90日以内に死亡した患者で全身治療を受けたのは13.2%であり、90日を超えて生存した患者でも69%にとどまった。腫瘍科医への紹介は治療導入と 強く関連しており、180日時点の治療実施割合は30.3%高かった。バイオマーカー検査も治療導入と関連していた。一方、80歳超では65~69歳に比べて治療実施割合が15.4%低く、また組織型がNSCLC-NOSの患者では腺癌に比べて治療実施割合が12.8%低かった。併存疾患、婚姻状況、保険加入状況、居住地域、人種・民族も治療施行と関連していたが、その影響は比較的小さかった。
本論文は、米国の進行非小細胞肺癌を患う高齢者ではなお多くの患者が全身治療を受けていない現状を示した点で重要です。診療体制の差だけでなく、80歳超で治療導入率が低かったことを踏まえると、高齢であること自体が治療の差し控えにつながっている可能性も否定できないと思いました。
雑誌名:JAMA Oncol. 2026 May 7:e261080.
PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42096214/
PMID: 42096214
PMCID: PMC13154025 (available on 2027-05-07)
DOI: 10.1001/jamaoncol.2026.1080
【薬理】
論文タイトル:
Prospective monitoring of plasma abemaciclib in breast cancer patients: associations with age and adverse events
本論文では、乳がん治療薬アベマシクリブについて、高齢患者における血中濃度の特徴が検討された。ホルモン受容体陽性乳がん患者23例から得られた322検体を解析した結果、治療早期のアベマシクリブ血中濃度は年齢と正の相関を示し、高齢患者では濃度が高く、かつばらつきも大きい傾向が認められた。
高齢がん患者では、臓器機能、併用薬、体格、全身状態などの多様性により、同じ投与量であっても薬物曝露量が大きく異なる可能性がある。本研究は、アベマシクリブ治療においても高齢患者では薬物曝露量に個人差が生じ得ることを示しており、高齢者の薬物療法では、年齢に加えて血中濃度のばらつきが存在する可能性にも留意しながら、安全性に配慮した治療管理を行うことの重要性を示唆する報告である。
雑誌名:Cancer Chemother Pharmacol. 2026 Jan 3;96(1):3
PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41484396/
PMID: 41484396
DOI: 10.1007/s00280-025-04849-7.