論文タイトル:Daily low-dose carboplatin or weekly carboplatin plus nab-paclitaxel for concurrent chemoradiotherapy in older patients with locally advanced non-small cell lung cancer (JCOG1914): A randomized phase 3 trial (2026年8月)
75歳以上の切除不能局所進行非小細胞肺がんに対し、日本で標準治療とされる連日低用量カルボプラチン(daily CBDCA)+胸部放射線療法(RT)に対して、CBDCA+nab-パクリタキセル(nab-PTX)+RTが全生存期間(OS)において非劣性を示すかを検証したランダム化比較第III相試験です。
JCOG0301では、RT単独に対してdaily CBDCA+RTがOSにおける優越性を示し、日本では高齢者に対する標準治療として用いられてきた。 一方、連日投与の負担や血液毒性が課題であった。週1回のCBDCA+nab-PTX+RTは、第I相試験で良好な奏効率と比較的少ない血液毒性が報告され、治療効果を維持しながら毒性や投与負担を軽減できることが期待されていた。
JCOG1914では国内38施設からECOG PS 0~1の切除不能局所進行非小細胞肺がんを有する75歳以上の患者を登録し、標準治療群ではCBDCA 30 mg/m²をRTの最初の20回に連日投与、試験治療群ではCBDCA AUC 2+nab-PTX 30 mg/m²を週1回、計6回投与した。両群ともRTは60 Gy/30分割で、主要評価項目はOS、非劣性マージンはHR 1.27であった。 中間解析ではOSのHRは1.766(95%CI:0.800~3.901)、最終解析で非劣性を示す予測確率は8.0%であり、効果・安全性評価委員会の勧告に基づき試験は無効中止となった。 全124例の解析ではOS中央値は標準治療群で未到達、試験治療群で26.1か月であり、非劣性は示されなかった。Grade 3/4の好中球減少や血小板減少は試験治療群で少なかったものの、治療関連死2例、非がん関連死7例を認め、標準治療群ではいずれも認められなかった。6週時点でFACT-TOIが悪化しなかった割合も71%対48%と標準治療群で良好であった。
この試験の大きな意義は、無効中止とはいえ、75歳以上の患者を対象とする第III相試験を成立させ、OSだけでなくQOLやIADL、G8まで評価した点です。 daily CBDCA+RTは海外では広く用いられておらず国際的な一般化可能性には限界がありますが、日本では「標準治療をより使いやすい治療に置き換えられるか」という臨床上の疑問に直接答えました。残念ながらnegative trialではありますが、日本の明日の日常診療を変え得る、非常に価値の高い研究だと考えます。
雑誌名:Lung Cancer. 2026 Aug 14; 220: 109583. Epub ahead of print. PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42636548/ PMID: 42636548 DOI: 10.1016/j.lungcan.2026.109583
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論文タイトル:Rates of Systemic Treatment for Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer Among Older Adults (2026年5月)
進行非小細胞肺癌を患う高齢者にどの程度、全身治療が行われているのかを検討した研究です。
近年、進行非小細胞肺癌では免疫療法や分子標的治療の進歩により、治療選択肢が大きく広がってきた。一方で、こうした治療の進歩が、高齢患者全体にどこまで行き渡っているのかは十分に明らかでなかった。このため本研究では、米国の進行非小細胞肺癌を患う高齢者を対象に、全身治療の実施割合、その経時的推移、さらに治療導入に関連する因子を検討した。
対象は、2006~2021年に進行非小細胞肺癌と診断された65歳以上の患者、25万4611例である。米国のSEER-Medicare連結データを用いた集団ベース研究で、主要評価項目は全身治療の実施割合とした。解析には、全身治療導入に関連する因子を検討するため、競合リスク比例ハザードモデルを用いた。結果、全身治療を受けた患者は全体の46.8%にとどまった。2006年から2021年にかけて治療実施割合はわずかに上昇したものの、その改善は限定的であった。診断後90日以内に死亡した患者で全身治療を受けたのは13.2%であり、90日を超えて生存した患者でも69%にとどまった。腫瘍科医への紹介は治療導入と 強く関連しており、180日時点の治療実施割合は30.3%高かった。バイオマーカー検査も治療導入と関連していた。一方、80歳超では65~69歳に比べて治療実施割合が15.4%低く、また組織型がNSCLC-NOSの患者では腺癌に比べて治療実施割合が12.8%低かった。併存疾患、婚姻状況、保険加入状況、居住地域、人種・民族も治療施行と関連していたが、その影響は比較的小さかった。
本論文は、米国の進行非小細胞肺癌を患う高齢者ではなお多くの患者が全身治療を受けていない現状を示した点で重要です。診療体制の差だけでなく、80歳超で治療導入率が低かったことを踏まえると、高齢であること自体が治療の差し控えにつながっている可能性も否定できないと思いました。
雑誌名:JAMA Oncol. 2026 May 7:e261080. PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42096214/ PMID: 42096214 PMCID: PMC13154025 (available on 2027-05-07) DOI: 10.1001/jamaoncol.2026.1080
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論文タイトル:Surgical outcomes and quality of life in octogenarians with early-stage non-small cell lung cancer: a prospective cohort study (2026年4月)
80歳以上の早期非小細胞肺癌患者に対する手術の安全性、術後QOL、長期予後を、80歳未満の患者と比較して検討した前向きコホート研究です。
対象は、2016年から2024年に手術を受けた腫瘍径30 mm以下のstage IA非小細胞肺癌患者884例のうち80歳以上である114例。 評価項目として、術式、術後合併症、入院経過、QOL、全生存、肺癌特異的生存が検討された。
80歳以上の患者では、80歳未満と比べて縮小手術が多く(78.9% vs 62.4%)、術後合併症も多かった(40.4% vs 22%)。 一方で、在院日数中央値はいずれも3日で、QOLは両群とも12か月で回復した。5年全生存率(84.2% vs 87.3%)、5年肺癌特異的生存率(94.4% vs 94.5%)はおおむね同等だった。
本研究は、手術適応となった80歳以上の早期非小細胞肺癌患者では、術後合併症は多いものの、QOLや長期予後は80歳未満とおおむね同等であったことを示した報告です。 ただし、比較的状態のよい患者が選択されている可能性があり、結果の解釈には注意が必要です。高齢者の手術適応は、年齢のみでなく、全身状態や併存症、患者希望を踏まえて個別に判断すべきと考えます。
雑誌名:Lancet Reg Health Am. 2026 Mar 13:56:101428. PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41616435/ PMID: 41616435 DOI: 10.1016/j.jgo.2026.102895
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論文タイトル:Longitudinal assessment of functional independence of older adults after lung cancer surgery: Final results of the JCOG1710A prospective cohort study
肺がんを患う75歳以上の高齢者に手術をすると、どれくらい生活に支障を及ぼすかを評価した前向き観察研究です。
肺癌の根治手術が可能な75歳以上の高齢者876人を対象として、術後6か月、12か月、24か月時点で、老研式活動能力指標(TMIG-IC: IADL+知的能動性+社会的役割を評価)や高齢者機能評価などを評価。TMIG-ICが3ポイント低下した場合に臨床的に意味のある差と定義。データ欠損の理由も収集し、データ欠損の扱いをかえた感度解析も実施。
結果、TMIG-ICの低下は、術後6か月で11.0%、12か月で10.3%、24か月時点で12.6%(データ欠測を除いた解析)。術後早期は、肺葉切除や区域切除と比較して楔状切除はTMIG-ICが低下しなかったが、術後後期になると、再発が生じることなどから楔状切除もTMIG-ICが低下するようになった。感度解析でも同様の結果であった。
単なる前向き観察研究ではなく、JCOGらしく、科学性を追求したうえで、信頼性の高いデータを用いた観察研究です。肺がんを患う高齢者と治療方針を相談する際に、手術でどれくらい体力が落ちますかね?と聞かれても答えられなかったところですが、この研究によって客観的なデータを提示することができるようになり、さらに共同意思決定が進むと思います。
雑誌名: J Geriatr Oncol 2025 May 30;16(6):102268 PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40449074/ PMID:40449074 DOI:10.1016/j.jgo.2025.102268
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論文タイトル:First-Line Pembrolizumab Efficacy in Octogenarians With NSCLCs Expressing ≥ 50% PD-L1 (ESCKEYP GFPC 05-2018)
80才以上かつPD-L1≧50%のNSCLC患者に対するペムブロリズマブ単剤の効果を評価したフランスの多施設後向き研究です。 よくある、「高齢者にはIO単剤でOK」という結果とは異なり、若年集団と比較して高齢集団はOSは短く(23.9か月 vs. 12.0か月)、PFSも短い(8.3か月 vs. 5.0か月)という結果でした。 一方、奏効割合は49% vs. 42%と大きな差はありませんでした。 この理由として、高齢集団では、腺癌と喫煙者が少なかったことが原因ではないかと考察されています。 有害事象や増悪「以外」でペムブロリズマブを中止した患者の割合は、若年集団で13.4%、高齢集団で23.2%と高齢者集団で高い傾向がありました。 ここから、高齢集団の予後を延ばすには、肺癌以外の疾患もケアする必要があると考えます。
もちろん後向き研究なので限界はありますが、高齢者だから放射線治療、という脊髄反射を見直すきっかけになるデータかと思います。 雑誌名:Clin Lung Cancer. 2025 Mar 4:S1525-7304(25)00047-6 PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40122771/ PMID: 40122771 DOI: 10.1016/j.cllc.2025.03.001
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論文タイトル: Surgery Versus Stereotactic Radiotherapy in Patients over 75 Years Treated for Stage IA–IIA NSCLC
75才以上の早期非小細胞肺癌を対象として、外科的手術と定位放射線治療(SABR)を傾向スコアマッチングで比較した後向き研究です。 傾向スコアマッチングで調整できた患者は、外科的手術群で127人、SABR群で85人。1年生存割合は、外科的手術群で83.87%、SABR群で88.8%、5年生存割合は、外科的手術群で47.3%、SABR群で31.5%であったが、統計的に有意な差ではなかった(p = 0.068)。早期死亡率に影響を与える要因には、男性、PS:2、FEV1≦85%、外科的手術であった。
もちろん後向き研究なので限界はありますが、高齢者だから放射線治療、という脊髄反射を見直すきっかけになるデータかと思います。
雑誌名:Cancers. 2025 Feb 17;17(4):677. PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40002271/ PMID:40002271 DOI: 10.3390/cancers17040677
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論文タイトル: Targeted therapy for older patients with an oncogene driven non-small cell lung cancer: Recommendations from a SIOG expert group
肺癌を有する高齢者に対する分子標的薬に関するレビュー論文です。 国際老年腫瘍学会(SIOG)が公表している論文であり、各種遺伝子変異を有する高齢者への有効性、安全性、使用上の注意などがまとまっています。 個人的には、Met変異は高齢者に多いこと、PPIとTKIを併用すると吸収が悪くなることなどを改めて確認できたのが良かったです。
雑誌名:Lung Cancer. 2025 Feb:200:108087. PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39826441/ PMID:39826441 DOI:10.1016/j.lungcan.2025.108087
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論文タイトル: Immunotherapy or Chemoimmunotherapy in Older Adults With Advanced Non–Small Cell Lung Cancer
75歳以上の高齢肺癌患者を対象として「ICI+ケモ」と「ICI単剤」を比較した前向き観察研究をご紹介します。(日本発のデータです)。
75歳以上の進行肺癌患者(分子標的薬の適応がある患者は除外)が対象、1,245人の患者が本研究に参加した。「ICI+ケモ」を受けたのは354人、「ICI単剤」は425人。Propensity score matchingした比較では、「ICI+ケモ」および「ICI単剤」を受けた患者は118人であり、「ICI+ケモ」と「ICI単剤」の全生存期間および無増悪生存期間に大きな差はなかった(OSのHR:0.98 (95% CI, 0.67-1.42; P = .90)、PFSのHR:0.92 (95% CI, 0.67-1.25; P = .59)。Grade 3以上のirAEは、「ICI+ケモ」で24.3%、「ICI単剤」で17.9%(P = .03)であった。
雑誌名:JAMA Oncol PubMed:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38451530/ PMID:38451530 DOI:10.1001/jamaoncol.2023.6277
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